鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2021年4月号では、第84回ゲストとして藤田ミノルが登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

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藤田ミノル(東京愚連隊)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

勢いを継続させる方法は
チャンスがありそうな人につく

藤田ミノル(東京愚連隊)

Cブロックのメンバーは
大日本に「かまされた」

藤田選手は2年前の一騎当千に初出場し、デスマッチのシングル連戦を経験しました。どんなものとして残っていますか。

藤田 それまでは大日本でシングルをやるとしたらタイトルマッチぐらいしかなかったんで、過酷でしたね。デスマッチの場合は体力的な面と、連戦だと傷が癒える前にまたデスマッチをやらなければならないというのがあるし。

感覚的にも嫌なものでしょうね、治る前にまたやらなければならないというのは。

藤田 当然嫌です。ズタボロの体でまた受け身を取らなければならない。こういう弱音を吐くのはいけないんですけど、本当に精神的に蝕まれるんですよ。通常ルールのプロレスでも連戦は体力的にキツいのに、それにプラスしてケガというよりも傷を負った状態でやらなければならない。前回、勝った記憶がないんです。傷を負うと勝った感じがしないから。

2年前は3勝していますが、記憶としては勝っているように思えていないんですね。

藤田 痛い思い、ヒドい思いをしまくったからそうなるんです。

フリー稼業としては、連戦は大歓迎なのに。

藤田 あれから来たオファーはなんでもかんでも受けようとは思わなくなりましたよね。仕事は選ばせてもらおうと。フリーとしての腹が決まったというか、続けるためにはなんでもやっていたらよくないということに気づきました。一つひとつの試合にも集中できるので。シングルのリーグ戦をやりつつ、空いている日はほかの団体に出て試合をやっていましたから、忙しかった記憶とシンドい記憶しか残っていないです。

それほどシンドいものとして残っていながら、今年も出るんですよね。

藤田 それは、ここで優勝すればもう一度デスマッチのチャンピオン(BJW認定デスマッチヘビー級王座)に返り咲くチャンスが得られるので。

昨年8月に初奪取しながら今年の1月2日に塚本拓海選手に奪われてしまいました。

藤田 いや、一時的に貸しているだけです。それを返却してもらうためのリーグ戦。チャンピオンでいたのは4ヵ月で、まだいろんな選手とタイトルマッチをやりたかった。濃かったですけど、何せ(王座を明け渡すのが)早かったんでやり残したことがいっぱいあると。たかが4ヵ月、されど4ヵ月ですからそこで培ったものはこのリーグ戦で生かせると思うし。

今回の一騎当千はエントリーされた16選手が4つのブロックに分かれてリーグ戦を争います。1ブロック4名ということは公式戦が3試合。つまり、1つでも負ければ1位通過が厳しくなり、全勝がマストなだけに実質トーナメントのようなものです。

藤田 全勝しなければ難しいでしょうねえ。しかも…私のブロックのメンバー、誰が選んだんですか?

Cブロックは伊東竜二、竹田誠志、星野勘九郎と、週刊プロレスいわく「もっとも強力なブロック」です。

藤田 これは陰謀ですよ。ほかのブロックがそうじゃないとは言わないですけど、まさにタイトルマッチでやりたかった人たちがここに集まっている。これはやられたと思いました。

ミスター・ポーゴさんが言うところの「かませやがったな!」というやつですね。

藤田 まさにそれです。大日本プロレスは藤田ミノルをかませようとしている! 頑張ったと思うんですけどねえ、これでも。

いや、頑張りましたよ。日本インディー大賞のMVPにまで選ばれたんですから。

藤田 この仕打ちは何なんだと。チャンピオンじゃなかったら何をやってもいいのかと。

ただ、見る側としてはCブロックが一番楽しみという人も多いでしょう。

藤田 竹田戦(4・2新木場)と星野戦(4・3静岡)が2日連戦なんですよね。

竹田選手にはシングルで…。

藤田 勝ったことがないんじゃないですか。2年前の公式戦でも負けているし、3年前のタイトルマッチ(2017年11月1日、竹田が保持していたデスマッチヘビー級王座に挑戦)でも獲れなかったし。

竹田選手は同じUNCHAINでしたが、1月に脱退し植木嵩行、佐久田俊行とE.R.Eを結成したばかりです。

藤田 さらに狂気性が増しています。

人間、あれ以上狂気性が増すものなんですか。

藤田 そうですね。結婚してお子さんも生まれたら普通は落ち着くものですが、なんでおかしくなっちゃうのかなと。試合中も柔らかくなるどころか逆をいっています。

家庭内のストレスを発散しているんでしょうか。

藤田 それだとしたら怖いです。より狂暴化した竹田誠志とやらなければならない。ただ、さっきも言ったようにトーナメントのようなものですから、ベルトは貸出中とはいえ全部がタイトルマッチだというぐらいに集中してやるしかないですよね。

タイトルマッチを2日連続でやった例はないですけど、それほどの意識で竹田戦、星野戦に臨むと。

藤田 それぐらいの覚悟を持ってやらないとインパクトも残せないと思うので。ほかのブロックには若い選手がいてギラギラしていますから、インパクトで負けていられないです。

泥泥ブラザーズ消滅の
真相は星野さんのムラ

Dブロックに石川勇希、兵頭彰が、BブロックにDDTから勝俣瞬馬と二十代の選手がエントリーされています。

藤田 自分のところは若い選手が一人も入っていないから何なんだよって思いますけど、意識はしますよ。まあ、そうは言いつつ俺が俺がみたいな、みんな蹴落としてやるぜ!みたいなものはそんなにないんですけど、実は。優勝はもちろんするんですけど。まあ、みんなで盛り上げていければいいかなと。

リーグ戦全体で盛り上がっていけばということですよね。2戦目の相手・星野選手には2年前の公式戦で勝っています。泥泥ブラザーズの盟友でもありますが…。

藤田 泥泥ブラザーズは正式に消滅しております。2年前の一騎当千が終わったあと私、大日本をしばらく干されていて、その間に向こうが一人平成極道コンビとかやり出して、今では(兵頭と)G☆SHOCK 1010とかいうのをやっているので。

星野選手と話し合ってそれぞれ別の道を歩んでいこうとなったわけではないんですか。

藤田 なかったです。

大日本に戻ってきた時に、もう一回とはならなかったのは?

藤田 もともとは年寄り2人が組むことで同世代の人たちに元気を与えるというのがあったんですけど、やってみてなんか違うなというのがあって。あの人、気持ちにけっこうムラがあるんですよ。

ああ、わかります。

藤田 気持ちにムラがあるとあまり意思の疎通ができないんです。会話をするのも、ツイッターでリプライする方が多かったという。

それ、あるあるですね。ツイッター上の方が饒舌になるという。可能性を見いだせなかったんですか、ユニットに対して。

藤田 そうですね。

即答!

藤田 これ以上は無理かなというところまでは頑張ったんですが。

平たく言うと星野選手側の問題ということでよろしいですか。

藤田 はい、僕はそう主張したいです。星野さんにはまったく未練はないんですけど、泥泥ブラザーズTシャツを買ってくれたファンの皆様に申し訳ないという気持ちはすごくあります。なのでたまに会場で着るようにしています。泥泥はなくなったけど、僕はまだ着ているよ、捨てないでねと。

そんな星野選手との一騎打ちです。

藤田 この前、星野さんもタイトルマッチで頑張っておられて(2・19後楽園で塚本に挑戦)すごいなと思いました。ただ、気持ちにムラがある方なので張りつめた糸はプツンと切れているのだと判断しました。

タイトルマッチが終わるやいなや…ものすごくわかりやすく緊張の糸が切れる方なんですね。

藤田 おそらくリーグ戦も「やるぞ!」とは言うと思うんですけど、私には見えております。そう簡単に勝てる相手ではないということもわかっておりますけど、タイトルマッチほどは頑張らないでしょう。そこを突いて丸め込みます。

勝ち方まで宣言してしまいますか。そして4・12後楽園で伊東戦。デスマッチヘビー級王座を奪取した8・29横浜文体の再戦です。

藤田 早いなあ、再戦。そしてタイトルマッチじゃない形で決まってしまうという。非常にやりたくないです。本当はしばらく時間を置きたかったんで。そのタイトルマッチの時も私が勝った!っていう試合ではなかったので(一瞬の丸め込みで3カウント奪取)。うまく相手の歯車を狂わせたところをクルっとやったんで、その手はもう食わないでしょう。だからほかのやり方を考えなければならない。

かといって、どうしても相手を完膚なきまでに叩き潰して勝ちたいというわけではないんですよね。

藤田 ああ、それにこだわるつもりはまったくないですね。チャンピオンの時もずっとそうでした。私、デビューして叩き潰せた試合など一度もないですから。

この4月でキャリア24年目を迎える中で一度もない!

藤田 いつかやってみたいですよねえ、そういうプロレスを。

ではこの伊東戦でやりましょうよ。

藤田 いえ、無理です。この先、一回ぐらいはやってみようと思いますけど、5分経過して叩き潰せなかったらその時点で諦めて穏便に勝ちます。

穏便に勝ちたいタイプなんですね。

藤田 それは無理ですよ。だってプロレスキャリアこそそこそこありますけど、デスマッチキャリアはそんなにないですから。見ていたキャリアの方が長いですから、デスマッチに関してはファンのようなものですよ。

そういう人間がデスマッチのリーグ戦を制したら夢があります。

藤田 そうであってほしいです。明らかに前回よりも優勝したいという気持ちは高いですから。強いチャンピオンではなかったですけど「チャンピオンだったっけ?」って思われるような試合はしたくない。やっぱり前チャンピオンだなって納得してもらえるような試合はしたいですね。

優勝戦はアブ小と。キャリア
初の叩き潰すプロレスをやる

じっさい、ベルトや賞を獲った2020年が開けた以後も、デスマッチヘビー級は獲られましたけどFREEDOMSでは山下りな選手とのコンビでKFCタッグ王座を奪取するなど、ちゃんと勢いが継続している印象です。

藤田 そこはチャンスを逃さないことと、チャンスがありそうな人についていくことですね。山下りなの金魚のフンになって。だって山下りなが横にいなかったらベルト挑戦というチャンスは巡ってこなかったわけですから。

勢いを継続するためにはそういうことを読むのも重要なんですね。

藤田 そこは自分だけではない。私も若くはないので、藤田ミノルをこれからどんどん売り出していくというのはそこまでないんです。このタッグに関しては、山下りなの背中を押しながらついていく感じで。そこは勢いを継続させるというより、むしろ今年の方が踏ん張らなければいけないなという意識が強いです。

去年がよかったから今年は落とせないと。

藤田 そういうタイミングでの一騎当千なんで、インパクトを残したいです。

ほかのブロックからこの選手に上がってきてほしいというのはありますか。

藤田 今はCブロックに集中したいので考えないようにしているんですけど…。

たとえば優勝戦でアブドーラ・小林とやりたいという思いはないんですか。

藤田 あ、アブドーラ・小林は大丈夫でーす。元気でいてくれればいいです。

親戚のオヤジみたいですね。

藤田 あんまりベタネタしたくないです。

大日本1期生と2期生のシングルマッチはみたいですよ。

藤田 そうですか? こういうリーグ戦で当たれたらよかったんですけどね。伊東竜二とアブドーラ・小林を替えてくれないかな。

FREEDOMSのリングにも上がっている一人として、ビオレント・ジャックの参加はどう見ていますか。今大会で一番話題となっている男です。

藤田 ずっと日本にいるので、私はもっといろんな人に見てもらって名前が広がってくれたらと思っております。勉強熱心で頭がよくて、もはや日本人ですよ。英語よりも日本語の方が話しやすいそうです。この前、ドリュー・パーカーと日本語で会話していました。ドリューはスペイン語が、ジャックは英語が苦手らしくお互い日本語の方が得意ということでそうなるようなんですけど。ドリューとも当たりたいですし。私がデスマッチヘビーのベルトを獲った時に、戴冠経験がある元チャンピオンの皆さんは挑戦を自粛してくださいと言ったんです。それはかなわなかったんですけど、僕の中ではドリューとかとやりたかったというのがあって。

まだタイトルマッチで描かれていない風景を見せたかったと。ではプレイヤーではなく、一デスマッチファンとして誰が勝ち上がってくるか予想してください。

藤田 (大長考)上がってきてほしいのは神谷英慶です。なんか、いろんなものをぶっ壊してくれるんじゃないかという気がするので。

神谷選手が勝ち上がってきたらDブロックなので準決勝で当たることになります。では、優勝戦は?

藤田 (即答)私が上がってきてほしいのはアブドーラ・小林。

やりたくないって言ったじゃないですか。

藤田 いやいや、そのシチュエーションならですよ。決勝でやるんだったら。そして、そこで叩き潰す。

一騎当千の優勝決定戦が初めてやる叩き潰すプロレス!

藤田 2021年にこの二人が決勝戦を争う…若手勢にとっては地獄のような景色ですよ、これは。

ベテランにいいところを持っていかれるという。ただ、優勝を果たすには準決勝&決勝と一日2試合デスマッチをやらなければならないというのも過酷すぎます。しかも5月16日日曜日、昼の興行ですよ。

藤田 うわー、真っ昼間から…心が折れます。前日と当日は水道橋駅近くのグリーンホテルに2泊取りたいと思います。これは通いだとシンドいです。朝、いくのもそうですけど帰るのも大変ですから。キャリーバッグを引きずって水道橋駅のホームの階段を登って。

水道橋駅のホームは試合を終えて燃え尽きたプロレスラーの哀愁が描かれる隠れスポットです。

藤田 勝ってヘラヘラ携帯を見ている人もいればね。そこまでも含めてこの日は大変ですよ。だからこそ当日は見てもらいですよね。世の中、どの世界も過酷だとは思いますが、目に見えてわかりやすく過酷なのがデスマッチですから。

こんなにわかりやすい過酷は、ほかのジャンルではあまりないでしょう。

藤田 こういう時代に肉眼で確認できる過酷って少ないと思うので。これはね、優勝したらもうチャンピオンでいいじゃねえかって思いますよ。そこまでのことをやって最後まで勝ち残った人間なんだから。優勝したあとにチャレンジって…もう、すごい世界ですよ。

2018年にストロングBJの回の一騎当千でBJW認定世界ストロングヘビー級王者の橋本大地選手が優勝戦に進出したことで、ベルトも懸けられた事例があります。その時は鈴木秀樹選手が勝って優勝するとともに新王者になりました。塚本選手が決勝戦に出てくれば…。

藤田 絶対にその場でベルトを懸けろって言いますよ、絶対に。