鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txtの場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2020年6月号では、第74回ゲストとして選手以外では初となる三田佐代子キャスターが登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

※『月刊スカパー!』(ぴあ発行)の定期購読お申込はコチラ
※鈴木健.txt氏 twitter:@yaroutxt facebook:facebook.com/Kensuzukitxt

三田佐代子(FIGHTING TV SAMURAI『速報!バトル☆メン』キャスター)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

伝わる喜びがあるから...
この仕事をやめたいと
思ったことはないんです

三田佐代子
(FIGHTING TV SAMURAI『速報!バトル☆メン』キャスター)

©FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史

先人がいない中で始めた
プロレスキャスターの仕事

「プロレスマスコミ」というと新聞や専門誌の記者を主に指しますが、三田さんはそれとは違うキャスターという仕事で携わっています。その立場から、日々どんな取材活動をしているのか、そこからお話しください。

三田 私はプロレスキャスターということでサムライTVが起ち上がった当初の1996年からずっと携わらせていただいているんですけど、プロレスのニュースを毎日放送する…今は週3日(月曜・三田さん、水曜・豊本明長さん、金曜・元井美貴さん)になったんですけど、プロ野球ニュースのように夜お家に帰ってきた人にその日だったり前の日だったりにあったプロレスの試合や記者会見などのニュースを見ていただき、その日いらっしゃっているゲストの解説者の方や選手の方にお話を聞くというのが生放送の本番がある日です。それ以外の日はだいたいがプロレスの興行の取材にいっています。

現場での取材はどのようなことをされるのですか。

三田 記者席に座らせていただいて試合のメモをとったり、非常に気になる試合のあとには選手がバックステージでコメントを出すので、そこにいってそれを聞いて自分が気になることがある場合は質問したりしてというのが私のお仕事です。

記者席でとるメモはどんな内容なんでしょう。

三田 気になる攻防であったり、セコンドについている選手であったり、たとえば誰かが対戦要求をしてくるかもしれないので、自分の場合はなるべく広く見て、試合以外でも目についたことをメモしておいて、たとえば次にその選手にあった時に聞いてみるとかしています。

専門誌やウェブメディアの記者さんは試合展開をその場で打ち込んだりしていますが、そういうスタイルではないということですね。

三田 ええ、私の場合はその試合の攻防を一語一句書き留めて、それを発表するの仕事ではないので、気になったことをちょっと大きく書いて線を引いておいて、これはいつか何かの時に引っかかるだろうなと思うようなことをメモ書きしています。

重要と思われる出来事ですね。

三田 重要と思っても中には全然重要ではなかったこともあるんですけど、自分にとって引っかかることを書いています。自分で書いておきながら字が読めなくて、これなんだっけ?と思うこともありますね。パソコンをブラインドタッチで打つこともできるんですけど、なんとなくノートで書いた方が自分の中で気持ちが落ち着く気がして。毎年一冊と決めているんですけど、それを20年間やってくれば20冊になるわけで、自分がやってきたことが形になってアナログとして残るのがいいなって思えるんです。

20年前のノートを見返したりするんですか。

三田 全部残していて、今も時々見直しますね。この仕事を始める前まではプロレスをまったく見ていなくて、大日本プロレスのピラニアデスマッチ(1996年8月19日、横浜文化体育館)を見た時に衝撃的で「この仕事は自分ではできない」と書いたんです。それを本当に自分で書いていたかどうか、ノートを引っ張り出して確認したり。あとは自分がどの大会を見にいったのかカレンダーになっているんで、去年の同じ日はこの大会にいっていたんだとかもわかりますし。

現場で取材するにあたり心がけていること、姿勢としてこだわっていることはありますか。

三田 プロレスラーをリスペクトすることは大前提だと思います。今は自分よりも若い方の方が遥かに多いんですけど、どんな立場の方であってもその気持ちは持たなければと思ってやっています。

キャスターの仕事は、どちらかというとゲストに話を振る役どころですよね。その振りのために取材しているという位置づけなんですか。

三田 私は今、月曜のニュース番組を担当していて、週末におこなわれる試合が多いこともあって必ずしも選手の方がゲストに来られるわけではないんです。なので、じっさいに番組の中で選手の方にインタビューする機会はそう多くないんですけど、いつか会った時にこれを聞いてみたいなあというところですね。自分の日々の仕事のためにいつかこの話を使うというようなものではないです。だからすごく時間が経ってから思い起こしてようやく聞けることとかもあります。何年前のあの試合はこうでしたよね?と振ると、選手の方も「そうなんです。よく気づきましたね!」という感じで答えてくださる。それは番組の中でも番組外でもあります。番組外で聞いて、これ面白いから本番でもう一度聞いてもよろしいですか?とお伺いすることもあります。

サムライ起ち上げ当初は、プロレスニュース番組のキャスターがいない時代でした。お手本とする先人がいない中で始めて、どうやって方向性をつかんでいったのでしょう。

三田 プロレスキャスターがどうあるべきというのとはちょっと違うかもしれないですけど、私はもともと大学を出て最初に就職したのがアナウンサーで、ニュースを読んだり人に取材したりすることはすでに経験していたんです。ただプロレス自体は知らないということで、番組を起ち上げた時に解説として来てくださっていた菊池孝さん(プロレス評論家)についていく形で記者席に座り隣で拝見させていただいて、試合が終わると「三田さん、よかったら下で秋山(準)選手がコメントを出すから一緒に聞きにいきましょう」と誘ってくださって、そこで初めて記者が囲むところにいくことができたんです。そのように、菊池さんが私を一つひとつ導いてくださって、ようやくプロレスマスコミの一人として「菊池さんが連れている女の子」という扱いだったと思うんですけど、そこからマメに取材に来ているんだなと皆様にちょっとずつ覚えていただいていったと思うんです。ですので、どうあるべきかというのは、プロレスの見方というか「こういうものなんだよ」という形で菊池さんから教わったわけではなかったんですけど、取材の姿勢であったりどう選手に話を聞くべきかであったりというのは、菊池さんに教えていただいたことが多かったなと思います。

キャリアを重ねていく中で、自身の立ち位置を考えるようになったと思われます。

三田 基本的にはプロレスラーと見ている方々の間に入る立場なわけじゃないですか。私はプロレスマスコミであっても単純に今もプロレスを見るのが楽しくて、その感覚が自分とファンの方々でできるだけ近くになればいいなというのがあるんです。私が「こんなのあり得ない!」と思うことが、みんなもそう思えることであるのがいい。その中でお客さんが関心を持ったり「これはどうなっているのか」と思ったりすることを幸い自分は直接選手の方に聞ける立場にあるので、それを代わりにやっているというのがスタンスですね。同じことを思っているかどうかの判断はもちろん自分自身の感覚なので、全然違っていることもあるかもしれません。でも「それを聞いてほしかったんだよ!」というようなことを聞けたらなと思ってやっています。自分はわかったとしても、客席からは疑問に思っているに違いないと思うこともありますよね。私はバックステージに話を聞きにいってわかったとしても、カメラの外だからお客さんには伝わっていない。だからそれを伝える役割があると思っています。

選手とファンの間に立つ者として、双方との距離感の取り方に難しさを感じることはありますか。

三田 私は専門誌や新聞の記者さんとは違って、それほど選手と一緒にいたり巡業へつきっきりになったりはしないので。それこそファミレスで一緒にご飯を食べたりするわけでもないので、よくも悪くもそんなに選手のすべてを知っているわけではないから、お客さんが知りたいと思うこと、引っかかったことに近いんじゃないかなと思っています。その日の全カードを見て、個人的にはこの試合が一番楽しみだなというようにお客さんは思うわけじゃないですか。私も同様にメインカード以外にも前半にこんなカードが組まれているのかと楽しみにして、おそらくお客さんも同じカードを楽しみにしているだろうなと…そういう感覚は大事にしたいと思います。

番組はファン、選手のもの
個人の衝動は文章で書く

試合以外で、現場取材する中での楽しみはどんなところですか。

三田 いろいろあるんですけど、たとえば大日本プロレスだったらデスマッチの設営を若手がどれほど速くやっているかとか、リング屋さんとリングを組み立てたり撤収したりとか、そういう作業を一生懸命やっている選手を見ると心に残りますよね。

番組の中での楽しさ、難しさは?

三田 やはり、みんなが聞きたいと思っていることと自分が知りたいと思っていることの最大公約数を訊ねるのが自分の仕事だと思っているので、それで選手から答えが返ってきて「そうだったんだ!」と結論にたどり着いた時が、一番嬉しいです。ようやくスッキリしたと。今はSNSがありますから、それを見た方々が「そうだったのか!」「それは考えつかなかったわ」みたいに盛り上がると、それを見てみんなが喜んでくれているんだったらお互いよかったねーって思えますし。もちろん限られた番組枠の中で、大会の煽りとして聞かなければならないこともたくさんあるんですけれど、それ以外にどうしても自分が聞きたいことを1つは用意して時間内で聞くようにしています。

生番組として限られた時間の中でやりとりし、必要なことを聞いた上で自分が聞きたいことも振るというのは、スムーズに進行させていかなければ難しいことですよね。

三田 でも私は生放送が好きで、あの緊張感がいいと思うんです。収録だと失敗しても録り直しできますけど、それだとその緊張感が途切れてしまうところがあるので。私は毎週やっていますけど、ゲストの方はそうではないので緊張もあるわけじゃないですか。だから一番聞きたい質問をどこでぶつけるかというのがすごくあって、生放送の場合は最後に一番聞きたいことを振らない方がいいと思っているんです。なぜなら時間がなくなってしまうケースがあるから。かといって緊張した状態のうちにいきなり本筋の質問をぶつけるのもどうかと思うので、それはやりとりをしていく中でタイミングを計りますね。あとは打ち合わせの段階で話が楽しくなっちゃって、本番でこの話したかな?とわからなくなる時もあるんですよ。打ち合わせで、どれほど本質に切り込みそうで切り込まないぐらいのところであっためるかというのも楽しいんですけど、やりすぎちゃうと失敗しちゃうこともありますね。

打ち合わせで盛り上がったやりとりを本番でもう一度やる場合もあると。

三田 ありますけど、それは選手にもよります。打ち合わせでメチャクチャ盛り上がったことをもう一度聞いて、同じように盛り上がってくださる方ならいいんですけど「この話、さっきしなかったっけ?」みたいなリアクションになっちゃうとダメなので。その場合は、この話よかったんでもう一度本番で振ってもいいですか?と確認を取るようにしています。私にとっては2回目でも、視聴者にとっては初めて聞く話なので楽しめますよね。それも楽しいんだけども、繊細で気をつけなければいけない部分でもあります。

生放送ならではのハプニングや予想していなかった展開で思い出すのは?

三田 それはいっぱいあるんですけど…まず、ゲストが来ない。

そんなこともあったんですか。

三田 何度もあります。私の曜日ではない時も合わせると、選手がスタジオへ来る前にお酒を飲まれてしまい来なかったとか。あとは台風とかで電車が停まって来られない、連絡ミスで来られない…数としてはそれほどたくさんあったわけじゃないんですけど、あったらやはり憶えていて。ある時は私と解説の方がいらっしゃって、とある大会の煽りをしなければならなかったのが、その選手の方が来ないからの2人だけでひたすらそのビッグマッチを煽るという回もございました。楽しみですねと言いつつ、楽しみですねとしか言いようがないんですけど。あとは本番中にタイトルマッチの調印式をやることがあるんですけど、やっぱりエキサイトしてしまって水をひっくり返してしまったり、外国人の選手がゲストとしていらっしゃった時にものすごくサービス精神が旺盛で、いきなりズボンを脱ぎ出そうとしたことがあったり。

ズボンを脱ぐことがその選手にとってはサービスだったと。

三田 パンツにかわいいイラストが入っていて、それを見せたかったようなんです。パンツは脱がなかったのでギリギリではありますけどね、ハイ。

何かしらに巻き込まれたりすることも経験されていますよね。

三田 インリン様に鞭で叩かれたADが伸びちゃったりとか、プロレスリング・ノアに新日本プロレスの真壁刀義選手が乗り込んだ時に、仲田龍さんが本番中に入ってきたことがあって、あれは本当に鳥肌が立つといいか、怖かった。ゲストが来ないというのは困りますけど笑い話になるじゃないですか。でもそうではない本当に怖かったこともあるので。とにかく、何が起ころうとも生放送ですから時間だけは過ぎていきますので…でも、もうやめたいと思ったことは一度もないです。

24年携わってきて、それに勝るものはないですね。

三田 いいことですよね。こんなに見ていてもプロレスを見るのが飽きたというのはまったくなくて、それは自分でもよかったなと思います。

記者の皆さんは担当制の中で自分の担当団体を主に取材しますが、三田さんはそれがない分、幅広く取材されています。それほど時間を費やし情報を把握し、知識を増やしている。

三田 基本的には後楽園ホールでおこなわれる大会にはいって、後楽園ではやれない規模のところはそれに準ずる大会にいくようにしています。予定がなければ毎日どこかでおこなわれている限りはそこへいくと。男子、女子、インディペンデント、場合によっては格闘技も見ますし、ここは見ないようにするというところはないですね。どうしても重なっちゃう場合は自分の中である程度の優先順位はつけなければならないんですけど、この仕事をやる中で最初に自分が認知されたのは『インディーのお仕事』だったので、インディーには助けてもらったという思いがあるんです。だからインディペンデントはなるべくいこうと思っていますし、新しい会場にいくのも楽しいですよね。プロレスキャスターをやっている自信というほどのものではないですけど、言えるとしたら比較的幅広く見ているというのはあるかもしれないですね。東京ドームから路上プロレスまで見るわけですから。

それほど見ているとキャスターとしての仕事以外に蓄積したものを出力するべく、文章を書かれています。

三田 最初に書くことを勧めていただいたのは当時、週刊プロレス編集長だった濱部(良典)さんでした。もう二十何年前の始めたばかりの頃ですね。もともと文章を書くのは嫌いではなかったんですけど、皆さんがインターネットで文章を書くようになっていった頃で、自分もプロレスをたくさん見るようになってきたタイミングで日記のように観戦記を書いていたんです。それで濱部さんに週プロにコラムを書かせて頂いたり、菊池さんからも「三田さんはおしゃべりをするように文章を書く人だ」と勧めてくださったりして。それでいろいろなところにコラムなどを書いているうちに新しいプロレスブームが来て、自分が書いていた文章をプロレスとは関係ない編集者の方が読まれていて「ウチで書いてみませんか」とお声がけをいただいたり、そういったものがちょっとずつ溜まっていって最終的には本を書きませんか?となりました。

2016年に発刊された『プロレスという生き方-平成のリングの主役たち』(中公新書ラクレ)ですね。

三田 番組の中では先ほども申しました通り皆様の代表として聞く側なので、自分がどう思ったかを言う番組ではないわけじゃないですか。私がこの試合を見てどう思ったとか、番組の中では出し切れなかったことを文章にしている気がするんですよね。番組はあくまでもファンの皆様のためであり、選手の方が話すお手伝いをするためのもの。書く方は個人なので、あふれる思いを形にしています。これはどうしても書きたい!という衝動が夜中にあって、そこで書いてしまうという。

突き動かされるものがある時に、文章として出力されると。

三田 突き動かされるもの、あります。飯伏(幸太)選手はまさにそういう存在です。言葉として出したいと思わせてくれるプロレスラーだと思うんです。

書く上での姿勢や気をつけていることは?

三田 今、言いながら思ったんですけどあんまり自分語りはしないことですね。私がどういう気持ちでこの試合を見たかとか、私自身のバックボーンは重要ではないわけで、会場の雰囲気とか、その時の選手の表情とかを書こうと思っていて。もちろん自分の欲求が赴くままに書くんですけど、一方では冷静で客観的にいなければなとも思うんですよね。

書いたことに対する反応で嬉しかったのは?

三田 プロレスに携わるようになったタイミングがジャンルとして落ち込んだ時期で、そこから盛り返してきてよくなる中でいい時期を一緒に走ってきた棚橋(弘至)選手や飯伏選手、大日本プロレス、DDTといったところについて3年前に出した本では書いて、当然その中で一番メジャーなのは新日本プロレスになるわけですけど、棚橋選手や中邑(真輔)選手のファンが私の本を読んで「DDTを初めて見にいきました」と言ってくださったのがすごく嬉しくて。それは本に限らず、ツイッターでこの試合が超よかったからと140文字で何ツイートも書くと「そんなによかったなら、今度その選手を見にいってみます」という反応がある。そういうのも嬉しいですよね。このよさを伝えたい!というのがあるわけじゃないですか。番組ではメインにしか触れられなくても、第1試合もよかったということにも触れたくて。伝わる喜びって…ありますよね。

そこまでしてプロレスというものを伝えたいと思うんですね。

三田 いやー、思いますね。それで生かしてもらっているという思いがあるので。こんなに楽しかったんだから、その楽しさを誰かと共有したいという気持ちにもよると思うんですけど、それはこれからも変わらないです。プロレスは日々、動いていて、新しい選手も出てきてやり尽くした感がないジャンルだと思うんで。

今こそ知恵を絞ったジャンルの
逞しさを見てもらえる

その常に動いていたジャンルだったのが、新型コロナウイルスの影響で観客を入れた形の大会を開催できない状況が続いています。

三田 “不要不急”の4文字にプロレスも入っちゃうんだなというのが切なくて。お芝居が好きな人も野球もサッカーもそれはみんなそうなんだけれど、自分たちが楽しいと思っていたことが不要不急なんだとなった時に、我々だけでなくプロレスラーも辛かったと思うんです。この比較が適切かどうかわからないんですけど、東日本大震災の時もプロレスができない、見られなくて辛いとなりましたけど、あの時はできる人は頑張ろう、プロレスを見る元気が湧いたら見に来てね、僕たちは体一つでみんなのところへいくからということができたわけじゃないですか。でも今はそれもできないという状況で…どれほど選手は辛いかと思うんです。自分も何を伝えたらいいのかと思うわけじゃないですか。毎週月曜に『バトル☆メン』という番組をやっていて、週末に試合がバーッとあってスタジオでしゃべることは数分ぐらいしかなかったのが、今は無観客の配信で伝えている映像を番組内で伝える以外、試合がないわけです。そうなった時に何ができるかと考え、ここ1ヵ月ぐらいはこういう時だからじっくりとお話を伺いたいと思う方に現状をどうとらえているのか、プロレスラーはプロレスしかできないということをよく言われますけど、私はそんなことないと思うし、じゃあプロレスができないのであればほかに何をしたらいいか、どう考えているんだろうということを聞いています。私、基本的には能天気で落ち込むタイプじゃないんですけど、そんな自分もこれほどプロレスを見ていないとなるとさすがにヘコむわという感じで。辛い中でプロレスラーの皆さんは自分たちで頭を使ってやれること、やるべきことを考えていらっしゃいますよね。棚橋選手のように「今はプロレスやりたい気持ち、観たい気持ちをプロレス貯金として貯めて、みんなで集まれるようになる時までに元気でいることが一番」というメッセージを発信していただいている選手の方がもいらっしゃいますので、それは自分もちゃんと心の中に留めておかなければと思うし、いざ再開した時にプロレスを忘れないでと思うわけじゃないですか。家で引き篭もるうちにそれでいいやとなっちゃうんじゃなくて、いずれ見にいけるようになったらプロレスは皆さんを待っていますよというのをちゃんと発信し続けなければと思っているんです、幸い番組が続いていますし。

無観客試合でさえも週に数えるほどとなった今、ニュース番組として休まず続いているのは、スタッフさんも含めて大変な思いをされてでもプロレスに対する情熱を持ってやっているからだと痛感します。

三田 自分にとっても選手にとっても、ちゃんと発信できる場があることのありがたみですよね。地上波とかではリモートによる番組作りも見られます。私もどうしますかと打診されたんですけど、週に一回でもサムライのスタジオへいくことがどれほど喜びとやる気になっているか。そこはお願いだからスタジオに来させてくださいと。もちろんコロナ対策はいろいろ気をつけてやった上で、それで元気でいられているなら…うん、ちゃんと見てくれる方がいて、番組を通じて発信したいと思っている選手がいる限りは続けていきたいと思っています。

最後に観客を入れた興行を取材したのは?

三田 3月24日のスターダムですね。

24年間欠かさず見てきたのが、(取材日の時点で)1ヵ月も見ていないという。

三田 あり得ないです。そのあり得ない状況になるんですよね、今…ファンの皆さんも同じ思いなんでしょうね。

その一方で、無観客試合という特殊な環境を経験しました。

三田 最初見た時は、こんなにゴングの音って響くんだとか、こんなにセコンドの声って聞こえるんだと思ったんですけど、画面に映っていないところで選手やスタッフが一生懸命盛り上げようとしているのがけっこうグッとくるものがありました。WRESTLE-1の活動休止前最後の大会(4・1後楽園ホール)もお客さんはいないんですけど、Cheer♡1(WRESTLE-1公式サポーターの女性ユニット)の皆さんがデビューしたばかりの選手を含め全員分の紙テープの色を揃えて、全試合のコール時に投げているのを見た時は胸が熱くなりましたよね。お客さんがいないのであれば、自分たちのできることをやってみんなでこの大会をやり遂げようというのが感じられて。ただ、今ではその無観客試合も極力人の数を減らさなければならないので、その4月1日が会場でプロレスを見た最後になりますね。

無観客の配信番組という形ではありますが、それさえも難しい他のスポーツやエンターテインメントと比べるとプロレスはなんとか止まらずに動いています。

三田 野球もサッカーもスタジアムがなければできませんよね。でもプロレスは極端な話、リングがなくても試合ができるフレキシブルな面がありますし、道場を持っている団体であればそこからスマホ一台で世界中に配信することも可能なわけじゃないですか。そこは知恵を絞ってできることをやろうとするジャンルの逞しさがあります。今こそ、業界としても団体としての選手の皆さんも頭使いまくりで、できないからボーッとしているんじゃなくて次を考えられる人はすごいし、そこに乗っかっていくパワーがあるのはいい意味でしぶといと思います。絶対に生き抜いてやろうという強い意志ですよね。大きい団体には大きい団体としてやるべきことがあり、フットワークの軽い小さい団体は小さい団体できることをやっている。本当、頼もしいなと思います。今は、試合とは違う形でプロレスの強さ、凄さを見られる時期という考え方もできるので、そこを見ていただきたいですよね。実はプロレス、やっているんですよ、生きているんですよということを番組で伝えたいし、サムライTVとしましても、プロレスはちゃんと血は通っていて心臓も動いているよということを伝えていきたいと思っています。

この状況が収束して元のようにプロレスをライブで見られるようになった時、何を楽しみに今は待っていますか。

三田 その大会がスタートする瞬間…それが曲なのかリングアナウンサーのコールなのかはわからないですけど、その時のお客さんの熱を感じたいなと思います。今、こうして想像するだけでも泣けてきちゃうんですけど、みんなで集まって楽しむこと自体が今はダメなわけじゃないですか。それを乗り越えた上で、みんなが一緒になって喜べる瞬間の空気ってどんななんだろうって思いますよね。だから収束後の一発目の大会はどの団体であろうと、日本のどこであろうともいきたいです。

サムライ5周年興行のような
ことをもう一度やれたら

これも収束後の話になるんですけど、これまでの24年間の中でまだ形にしていなくて、やってみたいことはありますか。

三田 また、まとめて文章を書きたいと思っています。今回のこともありますし、またプロレス界もそろそろ変わってきているところもありますので、それを本として出せたら。

レッスルマニアを現地で取材したいとかは?

三田 実は海外でプロレスを見たことがないんです。番組が月曜だから、レッスルマニアの取材にいっちゃうと帰ってくるのが間に合わないんですよね(レッスルマニアは現地の日曜夜開催)。そこはいける範囲でという感じです。映像でしか見たことがない会場もまだたくさんあるので、いってみたいというのはあります。

まだやっていなくてインタビューしてみたいという選手はいないんですか。

三田 実は内藤(哲也)選手ってまとめて話を聞かせていただいたことがまだないんです。なので聞いてみたいと思ったりはします。あとはWWEで今、女子が盛り上がっているじゃないですか。去年、サーシャ・バンクスが日本にひょっこり来ていましたよね。普通に後楽園のバックステージでフードを被っていたんですけど、明らかにスターだ!っていう感じで。カッコいい女子っていいなというので、なんのツテもないんですけど話を聞いてみたいです。日本からもASUKA選手、カイリ・セイン選手に(紫雷)イオさんがいっているので、あのムーブメントはいいなって思っています。

では、今までインタビューした中で強烈な印象として残っているのは誰ですか。

三田 天龍さんはいつ聞いても面白いことを言っていただけますよね。何度かインタビューさせていただいているんですけど、私の方が緊張しすぎちゃって…まだ菊池さんも一緒だった頃だったんですけど、プロレスをそんなに知らなかったから本でいろいろ調べてからいって、そこで「天龍源一郎さんはジャイアント馬場さんとアントニオ猪木さんからピンフォール勝ちをあげた唯一のプロレスラー」というのがすり込まれていたんです。それで緊張のあまり「天龍さんといえばジャイアント猪木さんから勝利をあげて…」と言ってしまって、天龍さんに「ひどいね!」と言われて。それからはお会いするたびに「よう、ジャイアント猪木さん、元気か?」と言われるようになったという。

いや、いい話ですよ。

三田 また別の日にはインタビューではなくケーブルテレビフェスタというようなイベントでのトークショーだったんですけど、アニメや映画関連でもあったので天龍さんにアニメーションは見るのか聞いたんです。そうしたら「見るよ。『トムとジェリー』はいいよね」って言われて。天龍さんの口から「トムとジェリー!」って出てくるとは思わないじゃないですか。それで驚いたら「あれはね、すごい名勝負数え唄だよ。あれだけ毎回闘っているのに、一つとして同じ終わり方はしないじゃない」って、熱弁を振るってくださったんです。トムとジェリーを名勝負数え唄と表現される天龍さんは素晴らしいなと思って。

そう思います。サムライTVの番組としてやってみたいことはありますか。

三田 開局5周年の時に後楽園ホールで記念興行をやったんです(2001年12月28日、後楽園ホール)。あれがすごく楽しくて、サムライで中継でしている団体の皆さんに集まっていただいて、男子も女子も格闘技もあったんです。ZERO-ONEが旗揚げして間もない頃で橋本真也さんや、修斗の宇野薫選手がいらっしゃっていたんですけど、そこで橋本さんが宇野選手のことを気に入って「薫ちゃんはかわいいよねえ。ウチに来てくれたらいいんだけどなあ」と言いまくって、宇野選手はプロレスが好きだから恐縮しまくっていたんです。まだLINEとかがない時代だったので、こんなデッカい革の電話帳みたいな手帳を出して「ここに電話番号書いてくれる?」って言っている橋本さんがかわいらしくて。そういう普段だったら会わないような人たちが集まるイベント…試合あり、トークショーありっていうのをやってほしいなって思うんです。あとは突拍子のないことを言わせていただければ、こういうご時世で言うことではないんですけど昔からプロレス版のFUJI ROCKをやってほしいなと思っていて。山を借りきってこっちのリングでは試合をやって、こっちのテントではトークショーをやって、物販もあってっていいじゃないですか。それとプロレスラーだらけの運動会はやってほしいって、20年言い続けているんですよね。以前にインディーのお仕事で各団体の若い選手を集めて体力テストをやったら、それがメチャクチャ面白かったんです。ロープワークの速さを競ったりすると、みんな本気になるから団体対抗でやると盛り上がって。今の状況を無事乗り越えたら、そういう楽しいことをみんなでやりたいですよね。世の中には楽しいと思えることがたくさんありますけど、プロレスは直接人間同士が闘って、己のすべてをさらけ出して、人生を懸けて、命を懸けて闘っているジャンルだと思うので、見ているだけでこちらも本当に生き返ったような気持になるので、今いろいろと辛いことがあると思うんですけど、これを脱したら会場に足を運んでいただいて、おいしいビールを飲んでお家に帰るのが一番です。それも難しいようでしたら、体の大きな人たちが人生を懸けて闘っているところをテレビで見て生きる活力を出していただけたらなと思います。