鈴木健.txt/場外乱闘 番外編

スカパー!公認番組ガイド誌『月刊スカパー!』(ぴあ発行)のスポーツ(バトル)では、サムライTVにて解説を務める鈴木健.txt氏が毎月旬なゲスト選手を招き、インタビュー形式で連載中の「鈴木健.txt/場外乱闘」が掲載されています。現在発売中の2016年10月号には、第36回ゲストとしてプロレスリング・ノア10・8後楽園ホールにて邪道&外道とのGHCジュニアヘビー級タッグ王座防衛戦を控える桃の青春の二人が登場。誌面では惜しくも載せられなかった部分を含めて大公開!!

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桃の青春/原田大輔&小峠篤司(プロレスリング・ノア)x鈴木健.txt 場外乱闘 番外編

ノアジュニアの魅力を浸透させて
自分たちの力でもう一度武道館へ

桃の青春/原田大輔&小峠篤司(プロレスリング・ノア)

©プロレスリング・ノア/FIGHTING TV サムライ/カメラマン:中原義史

王者として新しい扉を開く
ために邪道&外道を指名

―お二人がノアのリングでタッグを再結成して1年以上が経過しました。再び組み始めた頃と比べていかがでしょう。

原田 鈴木軍を倒すという同じ目標があったからまた組み始めたのがそもそものきっかけだったわけで、そこに関してはまだ排除しきれていないですからね。ベルトを獲り返した言うても、それは一歩ですから。鈴木軍ジュニアを排除して、本来のノアジュニアを獲り戻すまでにやらなければならないことがあります。

小峠 原田が言うた通り、やらなければならないという点ではまだまだありますけど、完成度という意味では、僕はそういうので計るチームではないと思っているんです。そういうのではめ込むよりも伸び伸びとやるっていうのが、大阪プロレス時代からの俺らでしたから。そこの部分でやりやすいっていうのは当時とずっと変わっていないです。

―再結成した直後も大阪プロレス時代と感覚的には変わらなかった?

小峠 そうでしたね。相方はどう思っているかわからんですけど、これだけ長く続けられているのは根っこの部分のプロレスに対する感性が合うからだと思うし。

原田 組んでも合わない場合って、リズムなんですよ。

小峠 あー、リズムはデカいね。たとえば終盤、攻撃をたたみかける時に阿吽の呼吸が合わないと、ひらたく言うとイラッとする時がある。そこは違うやろ!っていう。原田は、言わずともいてほしいところにいてくれる。こういうのって、練習してできるようになるもんじゃないんですよ。

―そうでしょうね。その場その場の状況によるものですから。なんでいるべきところにいるんですか。

原田 なんででしょうね。いたくはないんですけど。

小峠 そんなことないやろ! 同じ環境で指導されて、ベースのプロレスが一緒じゃないですか。拳王と大原(はじめ)のチームもすごいポテンシャルだとは思うけど、根っこの違いは感じますから。僕らの場合はナチュラルに合ってしまう。

原田 言葉を交わすと逆にうまくいかなくなる気がしますよね。

―ああ、それはわかります。

原田 東京に来てもこっちは関西弁を意識して話しているのに、標準語でしゃべられるとイラっとするし。

小峠 早く関東に溶け込むためですよ。関西弁をしゃべると、無条件で阪神ファンと思われるようなところがあるので。

原田 8年近くタッグを組んでいると言葉もいらないですし、お互いがいきたいと思った時にはもう一方が自然と引いていますからね。

―体を動かしながら、頭の中で考えていることが二人一緒になるというのはすごいことなんだと思います。日常の中では会話を交わさなければなかなか意思の疎通ができないものです。

小峠 言葉を与えることでよけいなことを考えさせたら、たぶんコケるんですよ。普段も全然会話しないですね。別に毛嫌いしているとか、そういうんじゃないですよ。でも、プライベートでも一緒になったことがないし。

原田 控室でも席が離れています。

小峠 これだけ長くやっていると一緒に飯食っているところをファンの方に見られるのがこっぱずかしいんですよ。「やっぱり原田と一緒なんや」って思われるのが恥ずかしい。

原田 二人だけになるのが気まずい。

小峠 二人で仕事呼ばれることが多いんですけど、絶対現地集合ですね。

―まさか現地解散?

小峠 そうです。

―たまには一緒にご飯食べたりした方がいいんじゃないですか。

小峠 芸人さんでよく言うじゃないですか、相方の連絡先さえ知らないって。あれ、すごくわかります。そこにマイクがあると、ちゃんとこなすと。僕らも同じですよ。

―そういう感じで続けていますけど、再結成当初と比べるとちゃんと精度は高まってきていますよね。

小峠 それは相手によるところもありますね。やっぱり相手によってこちらの攻め方も変わるわけで、その中でここはこうしようっていうのが二人の間で合致すると、その繰り返しの中でつかめるものがある。

―その相手としては拳王&大原はじめ組と今年に入りGHCジュニアタッグを巡り何度も凄まじい試合を見せてきました。中でも4・5新宿FACEでのタイトル戦は30分を超える激闘で絶賛されました。

原田 内容に関しては充実したものがありましたけど、それをいろんなファンの人に見てもらったかというとまだまだなんで。このカードだけで後楽園ホールや大きな会場が超満員になるぐらいに浸透させなければならないですよね。

小峠 ノアを盛り上げたいという意識は同じなんで、そこは鈴木軍とやる時と充実感が違います。向こうはいい試合をする気がないわけだから、こっちはなるべく早く勝つことでしかお客さんを喜ばすことができない。あのやり方を変えずにもう2年も続いているんですから、ある意味立派ですよ。

―そんな中、先に開催された日テレG+杯争奪ジュニアタッグリーグ戦では石森太二&ACHという新たな好敵手チームができました。

原田 拳王&大原とまったく違うスタイルのチームなんで、もっともっとやりたいですよね。やればやるほど面白味が増すと思います。

―リーグ戦の優勝戦では敗れてしまいましたが、SUPER J-CUP有明コロシアム大会でGHCジュニアタッグ王座を懸けて闘い、雪辱を果たしました。原田さんはトーナメントにも出場しましたが、じっさいにJ-CUPを体験していかがでしたか。

小峠 自分はJ-CUPに出るというよりも、しっかりとノアのジュニアを見せるという思いの方が強かったんで、そこは普段と変わらぬ意識でしたね。

原田 僕は1回戦で負けてしまって、J-CUPというものをそんなに体感しないまま終わっちゃったんで、有明では気持ちを切り替えて同じようにノアのすごさを見せることを考えて闘っていました。でも、J-CUPでいろんな団体の選手が集まって、いろんなスタイルを見られたのは大きかったです。ノアにはないものを持っている選手を見て勉強になったし。

―興味が湧いた選手はいましたか。

原田 興味が湧いたというのではないんですけど、2回戦のKUSHIDA選手と拳王の試合は面白かったです。自分らの試合までけっこう時間があったんで、前半の方はほとんど見ていたんですけど、あの試合が印象に残りました。

小峠 KUSHIDA選手とは過去にもいろいろあったんで(KUSHIDAは数カ月間、大阪プロレスの寮に住みレギュラー参戦していた時期がある)。この前、8人タッグで当たりましたけど(新日本8・12両国国技館)いつか本格的にやりたいですよね。あとは新日本の外国人チーム…ヤングバックスとかを見て、こんなのと試合をしたらどうなるんかなって妄想はします。

―他団体のジュニアに関しては意識的にアンテナを張っているんですか。

原田 そこはジュニアに限らず見るようにしています。雑誌でも見るしネットに動画が上がればどんなものかなって見るようになりますし。知らないよりは知っていた方がいいわけで。

小峠 幅広いですよ、僕は。映像で出ているとこはほぼ見ています。どういう選手が人気なのか、どういうスタイルが言い方悪いかもしれないですけどトレンドなのかっていうのは、流れが速い業界ですから見ておかないと今のプロレスファンがどういったものを求めているのかが把握できないですから。その中でもやっぱりIWGPジュニアタッグに絡むチームは否応なく目につきますよね。

―ヤングバックス、ReDragon、ROPPONGI VICE、リコシェ&マット・サイダルといったところですね。

原田 ウチと対照的ですよね。新日本プロレスは日本人だけのタッグチームは少ないのに対し、ノアは日本人タッグがたくさんあるという。

小峠 だからそこをノアジュニアのウリにしていくべきなんでしょうね。日本のプロレスファンが好きな日本人ならではのスタイルをぶつけ合うという。それを前面に出せるのはノアなんやっていうね。

―日本人対決という意味では、有明コロシアムで防衛を果たした直後に邪道&外道を次の挑戦者チームに指名したことにつながってきます。

原田 GHCジュニアタッグのベルトを持っていて、決着がついていないのが邪道&外道だったんで(6・12後楽園でTAKAみちのく&タイチを含めた3WAYマッチで対戦するも邪道&外道からは勝利を奪えず)、だったら有明コロシアムにいろんな人たちが見に来ている中で逆指名しようと。

―NOと言わせないシチュエーションを狙ったと。

原田 放送席に(外道が)いたのも、このへん(アゴヒゲのポーズ)が目立って目についたんで。

小峠 ただ、マイクに関しては一本獲られましたね。でも、それを覚悟した上で呼び出したんで。団体内では一通り防衛したんで、J-CUPという舞台で厭らしいかもしれないけどあのネームバリューにあやかって、踏み台になってもらおうと。あそこに勝ったらGHCジュニアタッグの価値はもちろん、知ってもらうという意味で幅が広がるじゃないですか。

―3WAYで対戦した時はどんな印象を持ちましたか。

小峠 有明のリング上と同じですよ。存在感と観客を引きつける力はすごいと思いました。

原田 でも、体力的には自分たちの方がまさっているのは明らかですから。タッグマッチとして普通にやれば勝てますし、ただ勝つだけでも面白くないんで邪道&外道のひきだしを全部開けさせます。錆びていたら開くかどうかわからないけど。最近プロレスファンになった人たちは邪道&外道というタッグのすごさを知らないでしょうから、それをひきだした上で踏み台にします。

小峠 あの二人に「ギャフン! こいつらには勝てないな」って言わせたいな。

原田 いや、ギャフンさえ言えない…グウの音が出ないぐらいの勝ち方をします。

―邪道&外道はファン時代に見ていたんですよね。

小峠 冬木軍の頃でした。

原田 僕もその頃からですね。そのあと、新日本プロレスにいってTEAM2000に入った頃も見ていました。ファン時代に見ていた人とやると、プロレスラーになってよかったなって思うんですよね。ノアに入って、道場で小橋(建太)さんの横で練習させてもらった時とかもそういう思いに浸れたんですけど、邪道&外道の名前を学生時代にレスリングをやっていた連中の前で出すと、おーっ!てなると思うんですよ。そこに勝てばすげえなと思われるでしょうから。

―これまでのGHCジュニアタッグ戦線でやってきたこととはカラーの違ったプロレスになりそうです。

小峠 ケンオーハラでもなく鈴木軍でもないという意味では、僕ら自身も新しい扉を開けるつもりで指名しました。タッグというよりも“邪道&外道”なんでしょうね、あれは。それほどのものを築き上げてきたことに関してはリスペクトしています。何十年も前から日本のジュニアタッグシーンの象徴でしたから。俺たちも、目指せるところは目指したいじゃないですか。桃の青春というタッグチームをそこまで上げるために対戦するというのはワクワクします。

―25年以上もずっと組んでいる2人です。

小峠 僕らが1歳とか2歳ぐらいから組んでいるわけですから、呼吸するようにやれるんでしょうね。25年いうたら、僕らはそこにいくまであと17年ぐらいかかるわけで。それを思うと今回勝てば、防衛を1回重ねた以上の価値がありますよ。

原田 それによって、まだ僕らを知らない人たちに僕らの名前が届く。

小峠 勝ったら即行で誰か僕らのウィキペディアに書いてください。

大阪プロレス勢の情報が
二人でする唯一の会話

―10・8後楽園で邪道&外道相手に防衛を果たした場合、ある程度のスパンで考えていることはございますか。

原田 タッグとしてもそうですけど、ノアとして日本武道館でやりたいです。ジュニアタッグリーグの1回目の最終戦が武道館だったんで、もう一回自分たちの力でいきたいというのはありますね。

小峠 それ、共感したわ。

―あ、言葉で伝わりました。

小峠 そういう大きな会場で選手権やりたい。積み重ねだとは思うんで、ちゃんとトレーニングしてチャンピオンとしての能力を高めるのはもちろんですけど、見てもらって人を集められるチームになりたいですね。

―新宿FACEで30分を超えたタイトルマッチを大会場でやったら、リアクションも波及力もまったく違いますよね。

小峠 これで二人の力が衰えてきたあたりで次の世代が武道館ってなったら哀しいなあ。

―自分たちの世代で実現させてください。ところで東京に住むようになって数年が経ちましたが、もう慣れましたよね、エスカレーターの位置とか。

原田 大阪に帰ると逆に「あっ…」と思います。

小峠 そこは大阪に帰った時も左に乗るんですよ(大阪はエスカレーターに乗るさい右に立って左を空ける)。この人、東京から帰ってきたんやなって関西人に思わせるという。

―お二人とも生まれも大阪なので、小さい頃は自分の人生において東京で生活するというのは想像もしていなかったのでは?

原田 十代の頃は、二十代でどんな生活をするかなんて考えもしなかったですよね。

小峠 なるようになったという感じですかね。ただただプロレスを究めようと思っていたら東京に出ていた感覚です。生活も大阪の時と変わらないですよ、インドア派なんで。今さら原宿や渋谷に出たりもしないし。そこはプロレスをしに来ているわけですから…遊びに出てきたんやないんや!

―でも、日々の中で何かしらの楽しみがないと。

原田 僕はけっこういろんなところにいっています。大阪の頃から東京で試合があると、前の日とか朝に着くとけっこうブラブラしていました。

小峠 何すんの?

原田 いや、本当にブラブラするだけで。じっとしているのが好きじゃないんです。

小峠 まあ、結局はプロレスが好きなんですよね。プレイヤーでもありファンでもあるんだなって思うんですけど、東京に来たら毎日のようにどこかしらの試合があるわけじゃないですか。今でもたまに見にいったりするんですよ。この前も上野公園で大日本プロレスさんがやっていたんで、昼にチケット買って見にいきました。あと、崖のふちプロレスにいきましたね。

―なんでまた?

小峠 たまたま知り合いと飯を食う約束をしたら、その前に崖のふちを見にいくっていうんで、ほなら俺もいきますよとなって、松本都vs紫雷美央を蕨まで見にいったという。

―ちゃんとアクティヴじゃないですか。

小峠 崖のふちを見て勉強になるという。まだまだ自分の知らないプロレスがあるなあって思いましたね。レベルが違いました。あのフィールドに入ったら俺、勝てねえなって。

―原田さんは他団体を見にいくことは?

原田 WWEの日本公演は本当にお客さん目線で見ます。本当に、ファンに帰って見られますよね。やっぱりやる側になってもそこはプロレスが好きですから。

小峠 アンテナを張るという意味では、大阪で活動している選手たちのことは気になりますよ。原田と唯一する会話も大阪勢の話。「タダスケが(大阪プロレス選手権の)チャンピオンになりましたよ!」って情報を提供してくれるんです。正直、そこまで仕入れたい情報ではないんですけど、なぜか大阪に関することは振ってくる。あの選手があんなになったんやっていうのがあったら、普通に見にいきたいと思いますからね。

―あの頃の大阪プロレスを見ていたファンの皆さんが、今でも桃の青春を見続けてその活躍を喜んでいるんだと思います。

小峠 それは本当にありがたいです。そこは今でも大阪から出てきたっていう意地もありますよ。

原田 出てきたからには世界に届くタッグチームになれるよう、頑張ります。