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2月3日のことです。夜更けでもないのに雨が雪に変わった新宿コマ劇場前で、わたしは呆然としていました。
345m:何というミステイク…。新北京プロレスが新宿フェイスだと完全に勘違いしていて雨の新宿で呆然としているなう。めげずに新木場向かうぞ!
そうです。年に一度、春節の時期に来日公演を行う新北京プロレスの大会の会場をすっかり間違えており、新木場1stリングに行かなければならないところを新宿フェイスに来てしまったのです。折れそうな心をtwitterにつぶやくことで何とか立て直し、そこから新木場への旅がスタート。名も知らぬtwitterの向こうにいる皆様方から
「それってインディープヲタあるあるですよ!」
「風邪引かないように頑張って!」
と勇気づけられながら新宿駅までたどり着いたところ、
345m:ていうか初めてりんかい線に乗るけど同じホームから実家方面(神奈川西部)に電車が出てたりしてさっぱりわからない新宿駅1番ホーム そもそも新宿新木場直通って何事
初めて乗るりんかい線におびえながら心は急げ新木場。しかしそもそもりんかい線がJRなのか私鉄なのか地下鉄なのか地上鉄(そんな言葉はございません)なのかもわからず、次第に不安に。
345m:地下の大井町駅とか全然知らないとこ走ってて不安なんですけど。品川シーサイドって何それ。これ本当に新木場連れて行ってくれるの?まさかのミステリートレイン…
するとまた皆さんが
「大丈夫、至って順調です!」
「大崎からはすぐですよ、新木場が終点ですから安心して下さい」
と勇気づけて下さるのです。皆さん何と心強い。そしてなぜそんなにりんかい線に詳しい?
そうこうしているうちに何とか電車は新木場に到着し、「新木場駅から1stリングまではタクシーで行って下さい!」という宇宙戦争ばりのアドバイスもあったのですがそれは丁重に辞退してダッシュで会場に駆け込んだところ、最初に目に入ったのはまるで見たこともない三蔵法師様でした。(高木大社長のブログのこの画像参照のこと)
また大社長や鈴木健さん、村田さんからは笑顔で「大変でしたね!新宿行っちゃったんですって?」と話しかけられ、ま当然ちゃ当然ですが私の間抜けっぷりはtwitterで筒抜けだったっていうお話です。
金角・銀角兄弟にはぎりぎり間に合いませんでしたが、試合後の銀角さんを捕まえて無理矢理お写真撮らせて頂きましたのでどうぞ。
でもやっぱり新北京プロレスは大変面白く、また珍しいレスラーの方々にもお目にかかれ、何故か曹魔刀選手に「切り干し大根、正解ですよね!」と話しかけられたのはよく意味がわかりませんでしたが楽しかったです。
さてその帰り道にふと思い出してSアリーナにメールを送りました。
みたさよこ(本物) TARUさん!さっきのVTRはディレクターにああ言えって言われたから言っただけです!遠くからブードゥー・マーダーズのことは応援しています。これから先もブードゥーがあれば、の話ですが。
そう、その日のSアリーナのゲストMCは、F4との解散マッチを前にしたブードゥー・マーダーズ、TARU選手、稔選手、歳三選手のお三方でした。
事前に撮影したVTRで「本当はF4応援しています」というコメントを出していたのでここはブードゥーにおもねっておこうかな、というつもりだったのですが、「何だあのAカップ!今度会ったらつまんでやるぞ!」と凄まれて逆効果でした…。
ブードゥー・マーダーズ。全日本プロレスに誕生してもう5年を数える極悪ヒールユニットです。過去にはジャイアント・バーナード、"brother"YASSHI、近藤修司、諏訪魔、小島聡といったメンバーを有し、解散マッチにも勝ってメンバーを入れ替えつつも存続している軍団。「バスに乗れるメンバーは限られているんだよ」と武藤社長自ら厳しい生存競争を促す全日本プロレスにおいて、憎まれつつもその欠かせない存在であることは間違いありません。
方やF4。小島聡選手率いるベビーフェイスユニットで、女性人気も高く、将来性のある若手を揃えています。普通に考えたら、F4を後押しする空気が圧倒的なはず。
ところがそうは簡単にいかないのが、プロレス界の面白いところです。
7日後楽園のメインイベントで組まれた、ブードゥーvsF4のキャプテンフォールイリミネーションマッチ。いつも通り悪そうに入場してきたブードゥーでしたが、いつも通りじゃなかったのは、キャプテンのTARU選手が、まるで死に装束を思わせる真っ白のコスチュームだったことです。そしてもう1ついつも通りじゃなかったのは、お客さんにTARU水をぶちまけるのじゃなくて、最前列のお客さんにTARU水を渡し、自分の頭の上にじゃばじゃばとかけさせたこと。身を清めているかのように見え、並々ならぬこの試合への覚悟が感じられて思わず胸が熱くなりました。
水曜Sアリーナの中でもブードゥーのメンバーが繰り返し言っていたことなのですが、ああ見えて(失礼)ものすごく絆が強く、そして男らしい男たちの集まりであるのが、実はブードゥーだということなのです。ヒールでありながら歴史も絆もあって、そしてそれは彼らにとって大事な仲間達であり、居場所でもあります。彼らはこの大事な仲間達と、代紋(!)を守るために、今日何が何でも勝たなくてはならない。そして歳三選手が最後に言っていた言葉。
「俺らブードゥーのファンに、どういう結果であろうと最後は胸張って帰らせたいんです」
さしたる乱入も凶器攻撃も反則も実はほとんどなく、8人のレスラーが真っ向勝負で闘い、最後は小島vsTARUのキャプテン対決。現三冠王者である小島選手に、1人のプロレスラーとしてTARU選手は向かい、ラリアットもコジコジカッターも全部受け、最後はTARUドリラーで文句なしの3カウントを奪いました。
その瞬間、後楽園は大きな驚きと共に、歓声に包まれたのです。もちろんF4の勝利を信じていたファンにとってはショッキングな出来事でしたが、それ以上にブードゥーの、そしてTARU選手の勝利を素直に賞賛する声、拍手が爆発しました。
うなだれてリングを降りるF4のメンバーとは対照的に、高らかにマイクを持つTARU選手。
「やかましいわい!たかがキャプテンフォールマッチで勝ったくらいでそんなに騒がなくてもええんちゃうかい?
前にも言うたな。ブードゥーはあえて嫌われ役やってやっとるねん。誰が好きこのんで帰り道に石投げられたり、イタズラ電話かかってきたり、名前も知らんヤツからアホボケ死ねとか言われなあかんねん。そういうツラーいことも全部引っくるめて、ワシらブードゥーマーダーズっちゅうもんや。
お前らもそうやろ。学校や会社、不満がいっぱいたまってる。そういう不満を俺らにぶつけたいから来てるんやろ。ワシらは寛大やから、お前らのそういうブーイング、全部受けとめてやるよ」
格好いい! 格好いいよTARUさん! TARU選手の思うヒール道、そしてなぜブードゥーがここまで生き抜いてこられたのか、その答えが少しわかったような気がします。
TARU選手も言っていましたが、ブードゥーを通り過ぎた選手たちはみな、トップレスラーとして今もリングに立っています。諏訪魔しかり、いずれWWEのリングに上がるであろうジョー・ドーリングしかり。そして全日本プロレスで行き場をなくしていたヘイト選手や歳三選手を、見事に再生させたのもブードゥーです。
例えF4が解散しても小島選手が三冠王者であることは揺るがないし、KAIや大和選手が全日本の未来を背負う存在であることも変わらない。でも、TARU選手はじめブードゥーに属するレスラーはほとんどが全日本所属ではないフリーのレスラーで、ブードゥー・マーダーズがなくなることはそのまま、全日本プロレスでの居場所がなくなることにつながりかねないのです。その覚悟の差がおそらく、今日の結果に繋がったんだろうと思うのです。
朝青龍が引退し、亀田兄弟もすっかり優しくなり、世の中全般的に悪役が生きづらい時代になりました。そんな中でお客さんに憎まれるヒールを演じ続けているブードゥー。みんなの、日々の不満を全部吸収してそれを受け止める寛大さを持つブードゥー。彼らもまたプロフェッショナルであり、その意識の高さがある限り、武藤選手言うところの「バスに乗り続ける」存在であり続けるはずです。
Profile
- 生年月日:1969年8月5日生まれ
- 血液型:A型
- 出身地:神奈川県小田原市
慶応大学卒業後、1992(平成4)年テレビ静岡にアナウンサーとして入社。 報道・スポーツ・バラエティなどあらゆる分野で活躍し、テレビ静岡の看板アナウンサーとなる。 より一層の飛躍を目指し、1996(平成8)年3月、同局を退社しフリーとなり古舘プロジェクトに所属する。 その後はプロレス専門チャンネル初代キャスターに抜擢。 現在、年間100試合以上の取材観戦でレスラー顔負けのアグレッシブさを見せている。 その他レポーターやMC、執筆活動など幅広く活躍中。 サヨコアリーナPLUSは、業界でもファンが急増中。